Montag, 7. Sep 2009, 14:24
Gackt 『Gackt Live Tour 2003 上弦の月 ~最終章~ 完全版』
初期GacktのLive映像の極みと言えるこの作品は、2003年のツアー『上弦の月』の横浜アリーナでの追加公演を映像化したものである.
今回のLiveで、まず特筆するべきは照明.ステージ全体を横切るアーチと、その中央に位置する円形の照明.シンプルでありながら多彩な動きを見せる光景が印象的だ.特に中央の円形照明は、月をイメージさせる手法に、『Birdcage』にて見せる衝撃的展開にと、想像のつかない使われ方をする.
サウンド面の安定感も突出している.荒いヴォーカルワークの多かった『MARS』、『ЯR』ツアーから『下弦の月』にて伸びのあり透明感のある声質に代わったが、それが本作品ではグレードアップしている.この映像作品ののちに発売される『nine*nine』にて、このコンサートのライブ音源が入手できるが、他のコンサートの音源と比べ、抜け目のなさは群を抜いている.
Gackt自身が脚本・主演した『MOON CHILD』とリンクした演出は、わざとらしくなく、そのくせスッと心に入ってくる.全編を通した「戻らない過去を想う」というテーマが、随所から感じられる.ピアノソロにおける失意にあふれる彼の表情、『Doomsday』のラストのシャウトは、きっと過去への想いを胸にしながら殺されたことを意味しているのだろう.そして『月の詩』で過去の自分との邂逅を果たす.映画の「ある場面」を描いて作曲したと言われる『Birdcage』は圧巻.同じ過ちを繰り返し、そして無邪気に笑っていた過去を思い出す.この曲のエンディングは何度見ても鳥肌が立つ.
そして彼曰く「これが実現しなかったらツアーファイナルをやり直す覚悟だった」という、ワン・リーホン、ゼニー・クォック、山本太郎の出演.過去に戻った先をこんな形で表現してくれるなんて、誰が予想しただろうか.
そして見逃してはならないのが、彼の茶目っ気あふれる特典映像.彼の身の周りはいつも〝Surprise〟にあふれているが、それがこんな形で降りかかってくるとは.
このツアー終了からしばらくして、彼は自分のヴォーカルスタイルを見直すことになる.当時の彼は「後期のGacktはここから始まる」と宣言した.これが彼の活動の折り返し地点ではなかったが、ソロ・アーティストとしてのGacktの「初期」は、中性的なヴォーカルワークを魅力としたここまでの時期をさしていいと私は思っている.そんな「初期のGackt」の集大成と言えるのが、『上弦の月』なのだ.